「UITPは、日本のジェンダー主流化の取り組みを歓迎します。」- Christel Goossens/Lindsey Barr(UITP)
UITPとそのジェンダー方針
UITPは国際公共交通連合(International Association of Public Transport)です。会員には、公共交通や都市モビリティの分野で活動するさまざまな企業・団体が含まれます。私たちの使命は、世界中の都市の持続可能性の実現です。この使命を達成するため、会員を支援し、都市部および郊外で持続可能な公共交通を提供するとともに、国際的なアドボカシー活動を行っています。 UITPは、展示会や会議を通じて知見を創出し、ネットワーキング、ピア・ツー・ピア学習、ビジネス開発の機会を提供しています。世界の全大陸で2,000を超える会員組織を擁し、あらゆる形態の持続可能な都市交通をカバーしています。対象は、バス、地下鉄、通勤鉄道といった従来型から、カーシェアリングや自転車シェアリングのような新しいシェア型まで多岐にわたります。会員には公共交通事業者だけでなく、政府機関、製造業、学術機関も含まれます。つまり、都市モビリティに関与するあらゆる組織がUITPに参加できるということです。 ジェンダー方針は、UITPの活動における重要な重点分野です。現場レベル、たとえば整備士、保守要員、運転士といった職種で女性労働者が不足しています。特にバス運転士は、女性の割合が極端に低い組織があります。保守やエンジニアリングでも状況は同様です。その背景にはさまざまな要因がありますが、大きな理由の一つは公共交通の組織文化です。強い男性中心のマインドセットがあるため、文化を変えるのは非常に困難です。これには、女性向け設備の不足、女性運転士のロールモデルやイメージの欠如、経営層の関与不足などが含まれます。また、シフト勤務や分割勤務(中抜けシフト)は、女性にとって適合しにくい場合があります。もちろん、家族がいる場合は、男女いずれにとっても非常に負担が大きくなり得ます。さらに、女性は一般に男性より小柄である傾向があるため、車両が女性にとって扱いにくい場合もあります。障壁は多いものの、私たちは女性を惹きつけるために多くの取り組みを行っています。 私たちは会員制の団体であるため、女性利用者に向けた施策を直接運営することはしません。その代わり、会員から優良事例を収集し、委員会、ウェビナー、刊行物などを通じて共有します。事業者自ら、女性専用車両や女性専用待合エリア、専用トイレや授乳室の整備、ハラスメント防止キャンペーン、照明改善、防犯カメラの増設など、女性の安全性と快適性を高める多くの施策を実施しています。こうした取り組みは女性の安心感を高めることを目指しており、女性にとって安全な環境は、すべての乗客にとっても安全性の向上につながります。
現在の取組
UITPのジェンダー方針には3つの側面があります。 1つ目は組織内部、すなわち職員構成に関する側面です。私たちはインクルーシブな雇用主であることを目指し、職員および管理職のジェンダーバランスを重視する複数の方針を実施しています。たとえば、男女間の賃金格差がない、すなわち同一価値労働に対する同一賃金を確保しています。管理職ポストの候補者選考では、ジェンダーバランスを確保するため、ショートリストに男性1名以上と女性1名以上を必ず含めます。 2つ目は会員を持つ団体としての側面です。UITPには、約20名の選出メンバーで構成される執行委員会、公共交通政策を担う約100名の政策委員会、約30のワーキンググループなど、多くのガバナンス機関があります。私たちは、それらすべての構成においてジェンダーバランスを確保するよう取り組んでいます。2019年に策定した方針では、すべての委員会に男女双方を含めること、会議のパネルを単一の性別のみで構成しないことを求め、UITP主催イベントでの女性登壇者数を倍増させる目標も設定しました。リーダーシップ選挙では、男性候補と女性候補の双方を擁立することを求めています。 3つ目は、公共交通セクター全体でのジェンダーバランスの促進です。私たちは世界各地の会員が参加するD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)ワーキンググループを積極的に運営し、D&Iの専門家や多様性・包摂に関心を持つ人々が参画しています。さらに、このテーマをUITPの活動の中心に据え、すべての委員会に働きかけつつ、会員全体に向けた活動や啓発の発表を行っています。会員向け活動において、このテーマを最優先事項としています。
取組の成果と評価
イベントでの女性登壇者数を倍増しました。2019年に女性登壇者数を倍増する目標を掲げ、2024年頃までに全イベントで達成できました。サミットでは直近の開催回で女性登壇者比率が43%に達しています。イベントの登壇者を探す際には、常に「バランスを取る必要があるので、女性登壇者も招いてください」と同僚に伝えており、その積み重ねの成果です。 エグゼクティブ・ボードにおける女性比率は0%から38%へ、政策委員会では11%から33%へ、委員会全体では19%から25%へ、社内のマネジメント・ボードでは10%から45%へと増加しました。 創設から140年以上の歴史の中で、初の女性会長が選出されました。これは重要なマイルストーンでした。 これらの方針により、UITPは3つの賞を受賞しました。
今後の展望
欧州および国際レベルでは、労働組合とも協力しています。ジェンダーの課題は労組にとっても非常に重要だからです。私たちは欧州運輸労連(ETF)および国際運輸労連(ITF)と、女性雇用に関する勧告で合意しています。状況改善に向けて労組と連携する強い意志があります。現在、その合意内容の見直しを進めています。人手不足が特に深刻であるため、労働力を拡大する施策に本腰を入れます。そして最も明快な解決策は、女性をこのセクターに呼び込むことです。 公共交通は世界的に見て大規模な雇用主です。都市によっては、公共交通が最大の雇用主となっています。世界中で数百万の直接・間接雇用を生み出しています。しかしセクター全体として人材不足に悩んでおり、女性は未開拓の人材プールです。座席、トイレ、車両基地、シフトパターンなどが女性を想定して設計されていないため、多くの女性が十分に活用されていません。簡単な話ではないことは承知していますが、見方によってはシンプルでもあります。少し発想を変えるだけで社会に大きな違いをもたらすと私たちは考えているため、このテーマに非常に情熱を持っています。あらゆる取組にジェンダーの視点を主流化できれば、非常に良い成果が得られるでしょう。
日本へのメッセージ
UITPは、日本のジェンダー主流化の取り組みを歓迎します。 世界的に見て、公共交通の利用者の大多数は女性であり、女性は男性より公共交通に依存する傾向が強いことが分かっています。世界の多くの地域で同様です。しかし、女性の移動パターンが男性とは異なるにもかかわらず、公共交通ネットワークはしばしば「家庭—職場の往復」という男性の経験を前提に設計されがちです。多数派である乗客のニーズに応えるなら、設計段階から運用・計画に至るまで、女性の視点をもっと取り入れるべきです。言うは易く行うは難しですが、1つ確かなことがあります。ネットワークの設計、運用、計画を担う当局に、より多くの女性が就いていれば、必ずその役割を果たします。そうなれば、女性の視点が自然ともっと反映されるようになります。労働力の観点からも、乗客の観点からも、女性の視点を持つことは非常に重要です。 男女で移動の仕方が異なるため、性別に分解したデータ(ジェンダー別データ)も不可欠です。一般に、多くの事業者は十分な分解データを収集していません。日本の国土交通省(MLIT)のような省庁は、事業者がこの重要なデータを収集するよう担保することで、重要な役割を果たすことができます。