自己紹介、これまでの歩みと交通分野・ジェンダーへの関心
私はドイツ国際協力公社(GIZ)で、Transformative Urban Mobility Initiative(TUMI)のジェンダーとインクルージョンのアドバイザーを務めています。現在は『Women Mobilize Women』の共同リードも担っています。2年前にドイツに移住するまではフィリピンで都市計画士として、世界銀行や地域の組織と協業しサイクリングやウォーキングなどのアクティブ・モビリティの推進に取り組んでいました。
ジェンダーの課題に関心を持ったきっかけは、大学でジャーナリズムを学んだ後、コミュニケーションの分野で働いていた時にさかのぼります。フィリピンの交通渋滞や移動の困難さが深刻で、ある同僚が「朝5時に出勤し、夜遅くに帰宅するため、子どもと全く会えない」と話してくれました。その話を聞いて、人々が家族と過ごす時間を奪われている現実に衝撃を受け、『交通の分野で人々の生活を変えよう』と決意しました。以来、サイクリング推進や、女性、障がい者、子どもなど、誰もが気兼ねなくモビリティにアクセスできる社会の実現を目指して活動しています。
現在取り組んでいるプロジェクト
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現在は『Women Mobilise Women』のリードとして、グローバルな視点でジェンダーに配慮した、インクルーシブな交通に取り組んでいます。このイニシアティブは2018年に始まり、女性同士が連携し、男性中心の交通分野で女性の活躍を促すことを目指してきました。『Remarkable Women in Transport』という一連の取組では、交通分野で活躍する女性を可視化し、イベント等での女性の登壇機会を増やしています。
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2024年には『Global Alliance for Feminist Transport』を立ち上げ、交通分野における世界中の女性同士が知見や課題を共有し合えるネットワークも構築しました。具体的な取り組みの例として、ジェンダーに配慮した都市交通計画のためのガイドの作成や、ラテンアメリカの都市交通事業者向けのジェンダー視点の自己評価ツール(Self-assessment Tool for Feminist Transport)の開発等を行っています。
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交通分野における知見の集積も行っています。「Global Alliance for Feminist Transport」のウェブサイトとナレッジハブを運営しており、ジェンダーと交通に関する情報を世界中の団体がアップロードできるようにしています。加えて、国、言語、専門性を選択し専門家を検索できる「Global Expert Database」というデータベースも開発しています。
プロジェクト内での役割
私自身は「コネクター」の役割を意識しています。イベントの企画・運営をするだけではなく、地域・国ごとの課題や文化的背景に合わせて、パートナーや関係者をつなぎ、一緒に考える機会をつくることが中心です。対話の場を設け、キャパシティビルディングも行うことで、最終的には関わった人々が自らコミュニティを築き、活動するように促しています。
プロジェクトの結果と評価
先ほども触れた自己評価ツール(Self-assessment Tool for Feminist Transport)は、公共交通機関の運営者や行政が、計画段階からモニタリングまで、ジェンダーに対する取り組みを取り入れているかどうかを評価するためのもので、コロンビアのカリ市のメトロ・カリでパイロット導入されています。導入の数か月後には、自己評価を通じて課題が洗い出されたことで、ハラスメント防止のプロトコルが作成されたり、ハラスメントが生じた際のドライバー研修が実施されたりしました。今後は他都市への展開や、オンライン版の公開も予定しています。
また、定量化することは難しいですが「コミュニティを築く」ことの効果も実感しています。例えば2018年に「Women Mobilize Women」が始まったことがきっかけで、ラテンアメリカにおいて交通分野の女性達のコミュニティが誕生しました。それ以来、チリやメキシコの交通分野の責任者や政策担当者たちが、「一緒に政策を推進しよう」などと話し合っており、政策・実務レベルへの影響は確実に広がっていると感じます。
今後の展望
私たちの役割は、現地の人々が自分たちで変革を起こせるように伴走し、必要な知識やリソースを提供することです。日本を含め、世界のどの都市・地域でも、女性や多様な人々が安心して移動できる社会を実現するため、これからも国際的な連携を続けていきたいと思います。
「女性のパワーを解き放つ」ということが鍵だと思います。これは、労働力を増やすためだけでなく、どのようにやれるかについて別の視点をもたらします。
最後に、もしあなたが影響力のある立場にいるのであれば、「どうすれば同じ分野の他の女性をエンパワーできるか?」を自問してみてほしいです。また、交通分野で働く人々だけでなく、普段交通を利用する人々についても、「どうすれば母親や女性が安全に移動できるか」という問いを持ち続けてほしいです。そうした問いかけを常に持ち続けることが大切です。また、データやエビデンスも重要です。例えば、どれだけ多くの女性が影響を受けているのか、働いているのか、女性のために変化を起こしたいなら、まずは女性を数えることが大切です。