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ジェンダーの視点から考える、暮らしやすい社会 - 原口 悠(国土交通省)

ジェンダーの視点から考える、暮らしやすい社会

自己紹介―ジェンダーへの関心

私は国土交通省国際政策課で、ITF(国際交通フォーラム)をはじめとする多国間枠組みとの連携を担当しています。国土交通分野のジェンダー平等は、誰にとっても暮らしやすい社会をつくるために重要と考えています。

このように考えるようになったのは、2025年9月に開催した国土交通省とITFとの政策対話の場で、交通分野におけるジェンダーの視点の重要性を学んだことがきっかけです。この政策対話を通じて、日本の現状や課題を改めて認識するとともに、ジェンダー主流化が社会全体の利益となることを学びました。

取り組んでいるプロジェクト

ITFなどの国際機関では、長年にわたりジェンダー主流化に関する国際的な知見の共有・蓄積が進められています。国際政策課ではこうした国際的知見の国内への還元に取り組んでおり、その一環として、私は本ウェブサイトの企画や構成の検討に携わってきました。

本ウェブサイトでは、ジェンダーの視点からまちづくりや交通を見直す国内外の先進的な取組を紹介しています。こうした事例を手がかりに、自分たちが暮らすまちや地域をジェンダーの観点から捉え直すことで、改善すべき点や、より暮らしやすいまちづくりへのヒントが見えてくるのではないでしょうか。

特に、私のような男性にとっては、身近な女性の不安や不便に耳を傾けたり、日常の中で困難を抱える人々に目を向けたりすることが、女性の課題に気づき、理解を深める第一歩になるはずです。まちの在り方や人々の意識は一朝一夕に変わるものではありませんが、こうした一つひとつの気づきが、社会をより良い方向へと少しずつ動かしていく契機になると考えています。

今後の展望

「ジェンダー平等」と聞くと、どこか難しいテーマだと感じる方も多いのではないでしょうか。ジェンダー平等は、政治や経済、教育など幅広い分野に関わるとともに、抽象的に捉えられがちなテーマでもあります。加えて、特に男性の中には、その重要性を総論としては理解しつつも、議論が難しいと感じて無意識に距離を置いてしまったり、あるいは「女性のための議論であり、自分には直接関係がない」と受け止めている方もいるかもしれません。

確かに、ジェンダー平等を実現していくためには、女性が直面している困難に目を向け、それを解消していくことが不可欠です。しかし、こうした問題の多くは、これまで男性中心に形成されてきた社会や制度、そしてそれを当たり前として受け止めてきた人々の意識に起因しています。そのため、こうした構造を変えていくためには、まず男性自身が現状を認識し、自らの意識を見直していく必要があると考えています。

同時に、ジェンダー平等の推進は決して女性だけの課題ではなく、男性にとっても意義のあるものです。例えば、女性であることを理由に不当な扱いや不利益を受けることのない社会を実現することは、家族や友人、同僚といった身近な女性の生きがいや安全・安心の向上につながり、家族の幸福や、組織全体の生産性の向上に結びつきます。また、ジェンダー平等の推進は、従来の性別役割分業を乗り越えることで、男性を含むすべての人の選択肢を広げ、より多様な生き方や働き方を可能にするものです。

こうした考え方は、まちづくりや交通といった分野にも当てはまります。例えば、本ウェブサイトでも紹介していますが、夜道やバス停の照明を充実させること、交通機関において女性のニーズに配慮した設備やサービスを導入すること、あるいは運輸・建設産業において女性が働きやすい環境を整備することは、女性が暮らし、働く上での障壁を取り除くことにつながります。同時に、それは男性にとっても、より柔軟な働き方や家事・育児への参画を後押しし、いまだ社会に根強く残る「男性は外で働き、女性は家庭を守るべき」といった固定観念を見直す力にもなり得ることを願っています。

※ 各インタビューは所属組織のものではなく個人の見解です。また、所属・タイトル等はインタビュー当時のものです(2026年3月更新)

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