自己紹介、経歴と交通・ジェンダーへの関心
長い間、交通はアスファルト、橋、鉄道、エンジニアリングといった「純粋に技術的なもの」として、ジェンダー中立と見なされてきました。しかしモビリティは中立ではありません。誰が仕事、学校、医療、マーケットにアクセスできるのか、最終的に誰が自分の人生を形づくれるのかを左右します。
私がキャリアの初期に強く感じたのは、世界は女性や女児の教育や保健の成果向上に多大な投資をしており、それは全く正しい一方で、安全で手頃で信頼できる交通がなければ、女性も男性もその投資の恩恵を十分に享受できないという現実です。モビリティは人的資本の「見えない、あるいは見えていても見落とされがちな」連結器であり、実現のための基盤です。そこが機能しないと、機会は瓦解します。
もう一つの不平等にも気づきました。交通は世界的に最も男性比率の高い産業の一つでありながら、比較的高給でもあります。女性の職の量と質の双方を本気で改善するなら、交通のようなインフラ分野を無視することはできません。
この分野の進展は大抵ゆっくりです。たとえば、ある交通事業者が初めて女性ドライバー50人を採用するには、準備、研修、免許取得、職場慣行の見直し、女性に向く/向かないという思い込みを解くための社会的キャンペーンなど、数年にわたる取り組みが必要になることがあります。外から見ると、女性ドライバーやエンジニアを50人受け入れることは小さく見えるかもしれません。しかし大規模雇用主が最初の一歩を踏み出すことは強いシグナルになります。変化は可能だと示すのです。
その努力—関係者のモチベーションや投資、そして一見小さな一歩のデモンストレーション効果—こそが、私の原動力です。
私がジェンダーの専門家として交通に入ったのは、当初は意図的ではありませんでした。欧州復興開発銀行(EBRD)で、インフラ分野を担当するジェンダー専門家に任命されたのがきっかけです。そのとき、他分野と比べて、このテーマが交通では見過ごされてきたこと—人的資本や雇用創出を前進させる「有効化」分野であるにもかかわらず—に気づきました。また、知見や分析の大きなギャップも見えました。実践的な「どうやって」に取り組む前に、「なぜ重要か」という基本から始める必要があったのです。これは刺激的であると同時に挑戦でもありました。
それ以来、ほぼ15年にわたり、交通を含むインフラ分野に携わってきました。後に世界銀行でも同じ分野を続けたのは、意図的なキャリア選択です。
プロジェクトにおける役割
私の仕事は、交通政策とプロジェクト、労働市場、ジェンダー平等の交差点にあります。その核心は、「モビリティ・システムから誰が恩恵を受け、誰が受けていないのか」というシンプルな問いを発することです。
私たちは、女性と男性の交通の使い方の違いを見ます。多くの国で、女性は公共交通や徒歩への依存が高く、無償ケア責任のために「トリップチェーン(複合的な移動)」が複雑になり、ハラスメントや暴力のリスクが高い傾向にあります。こうした現実が、システム設計に反映されることは稀です。
女性(や女児)を交通で推進するとは、政策設計、インフラ計画、サービス運行の初期段階から、これらの現実を織り込むことを意味します。また、女性が交通システムの利用者にとどまらず、計画立案者、エンジニア、運転士、意思決定者として参画できるよう、就業上の障壁に対応することも必要です。
重要なのは、この仕事を交通省だけに閉じ込めないこと。労働、社会保障、教育、民間部門の関係者との連携が不可欠です。
自習型eラーニング「交通におけるジェンダー平等」
5年前にこの自習型コースを開発した当時、「なぜジェンダーが交通で重要か」だけでなく、「どう取り組むのか」「その恩恵は誰に帰するのか」までを解説する、無料の自習型の基礎トレーニングは存在しませんでした。UN Womenと協力し、そのギャップを埋めようとしたのです。
コースは実務的でアクセスしやすい設計とし、モビリティ上の障壁が女性の人生機会にどう影響するかを説明するだけでなく、駅の安全設計から雇用戦略に至るまで、具体的に何ができるかの例を示しました。
数年経った今も広く使われ続けており、何百人もの実務家、交通事業者、ジェンダー専門家が受講・認証を得ています。登録は現在も増え続けています。これは、この対話への関心が高まっていることを物語っています。
開発を通じた大きな学びは、多くの専門家が、交通をジェンダーのレンズで見るよう求められたことがそれまで一度もなかった、という点です。一度そのレンズを通して見始めると、セクターの見え方が変わり、その視点の転換は変革につながり得ます。
印象深いジェンダー案件・イニシアティブ
とりわけ有意義だったのは、アゼルバイジャンの労働法改正支援です。交通プロジェクトの訪問中、女性が数百の職業(多くは交通・インフラ関連)に法的に就けないことを知りました。法令を分析すると、地下での就業、機関士、特定のバスの運転など、女性に課された制限が約700項目見つかりました。
これらは本来、女性の健康を守る目的でしたが、時代遅れで差別的なものになっていました。私たちは3年かけて、経済的・法的・ビジネスの観点から改正の根拠を構築し、職業衛生研究などのエビデンスにも大きく依拠して、制限撤廃がリスクを伴わないことを示しました。2022〜23年に政府は職業および夜間労働の全ての制限を撤廃しました。
もっとも、法改正だけでは不十分です。その後、国有企業と協働し、職場環境、設備、人材定着策などの「ソフトな障壁」へ対応しました。真の変化は、法令だけでなく、日々の職場環境で起こるからです。
この取り組みは世界銀行グループのJobsアジェンダを直接支援しています。差別的法律を撤廃して政策・規制の枠組みを強化し、女性が新たな雇用機会にアクセスして成長に貢献できるよう労働市場の基盤条件を改善し、企業が法的に制限されたサブセットではなく国全体の人材プールから採用できるようにして民間部門の発展を促し、投資を呼び込み、イノベーションを育む、より効率的で包摂的な労働市場をつくります。
もう一つ最近主導したのが、「She Drives Change: A Toolkit for Redefining Opportunities for Women in Transport」です。これは日本政府の「質の高いインフラ投資(QII)パートナーシップ」による資金拠出で実現しました。
都市交通、道路、鉄道、航空、海運、経済回廊にわたり、モビリティ、雇用、起業のジェンダー格差を縮小するための、実務的で体系的なアプローチを交通専門家や政策担当者に提供します。その独自の価値は、サブセクターごとのきめ細かなガイダンスにあります。海運で有効な策が、航空や都市交通でそのまま有効とは限りません。
このツールキットは、世界銀行の業務経験と世界の事例に基づき、各サブセクター向けに個別の介入策と指標を提示します。随時更新されるデジタル版(shedriveschange.worldbank.org)には、新たなエビデンスや事例が継続的に追加されています。世界銀行内外での力強い採用は、その有用性を示しています。多くのチームが、交通プロジェクトや政策設計に積極的に活用しています。実現にあたり、ご支援くださった日本政府に感謝申し上げます。
これらや他のプロジェクト、政策対話、交通とジェンダーに関する分析については、世界銀行のGender and Transportのページおよび結果概要「She Drives Change: Empowering Women in Transport」もぜひご覧ください。
世界的に見た女性のモビリティの障壁
各国で、女性はモビリティやセクター内雇用において不均衡な障壁に直面しています。どこを見ても、現場のデータは、人々の移動を左右する障壁—アクセシビリティ、可用性(アベイラビリティ)、負担可能性(アフォーダビリティ)、受容性(アクセプタビリティ)、安全・安心(セーフティ&セキュリティ)—が、女性に不均衡に影響することを一貫して示しています。
これらの障壁は多くの場合、社会規範に根ざします。無償ケア労働、過重な家事責任、女性が「行くべき/行くべきでない」場所や「就くべき/就くべきでない」仕事に関する期待などです。その範囲や深刻度は文脈によって異なりますが、どの国も例外ではありません。経済発展度や他の国家指標が高いからといって、これらの課題から免れるわけではないのです。
交通システムが女性に機能しないと、その帰結は重大です。少女は学校を欠席し、女性は仕事の選択肢を狭め、医療へのアクセスが難しくなり、経済参加は低下します。もし女性が同等のモビリティにアクセスできれば、その恩恵は個人をはるかに超えて広がります。家族、企業、そして経済全体が利益を得ます。女性の労働参加を高めれば、世界のGDPに数兆ドル規模の押し上げ効果があることを示す研究もあります。
万能薬はありません。持続的なインパクトは、相互に補完し合う行動を組み合わせることで生まれます。具体的には、変革を制度化するための強いリーダーシップと明確な任務・資源を持つ専任チーム、エビデンスに基づく計画と説明責任を担保する性別分解モビリティ・データの活用、ダイヤ遵守の徹底やファースト/ラストワンマイルの改善を含む、より信頼性が高くアクセスしやすいサービス、サービス協定に組み込まれた規制強化と反ハラスメント措置、ハラスメントに効果的に対応できるよう現場職員の訓練、十分な照明や設備を備えた安全で包摂的な公共空間への投資、有害な規範に挑むコミュニティ・エンゲージメント、交通労働力における女性比率の向上、そして有効な施策を適応・拡大するための継続的なモニタリングと評価です。
心強いことに、変化は進行中です。より安全な交通システムの設計が進み、文脈によっては就業参加も高まり、政策立案者は、交通におけるジェンダー平等がニッチな課題ではなく、開発・経済・ビジネスの必須課題であると認識し始めています。
日本へのメッセージ
交通の不平等はしばしば見えにくいものです。しかし一度目を向ければ、誰が仕事にアクセスできるのか、誰が通勤で安全だと感じるのか、そして誰が私たちのモビリティ・システムを形づくる労働力の一員として代表されているのかに、その不平等がはっきりと現れます。
多様な利用者のニーズを反映した交通システムは、より良く機能します。交通・空間分野で女性の参画が進むほど、タレントプールは広がり、イノベーションが加速し、まったく新しい市場が開けます。ジェンダー格差の解消は包摂のためだけではありません。人的資本を解き放ち、エンジニアリング、運行、テクノロジー、データ、インフラにまたがる質の高い仕事を創出することでもあります。
私のメッセージは冒頭と同じです。モビリティにおけるジェンダーへの取り組みは、公平性だけの問題ではありません—効率性、持続可能性、そして経済的レジリエンスの問題です。雇用創出、労働力の拡大、そして社会の潜在力を最大限に引き出す、将来に備えた交通セクターの構築に関わるのです。
日本には、技術力、産業のリーダーシップ、制度的な強みがあります。この分野で主導し、ジェンダー平等がイノベーション、競争力、長期的な経済成長を駆動し得ることを示せると信じています。