PIARCの概要
PIARCは1909年に設立された非営利・非政治的な国際組織です。現在128カ国の政府が加盟しており、内50か国は個別に委員会が設置されています。PIARCに加入している会員は幅広く、自治体、大学、企業、個人等で構成されています。PIARCの目的は、道路交通分野における知識や政策、プラクティスの共有です。80か国以上からボランティアで集まった約1900名の専門家が道路交通分野における様々なテーマを取り扱う23の委員会を形成し、4年ごとに計画を組みながら活動しています。
PIARCがジェンダーインクルージョン・ダイバーシティに取り組む背景
道路交通分野は男性が多いと言われますが、PIARCは「Gender inclusion and diversity」を組織のコアバリューと位置づけています。理由は、単に「良いこと」だけでなく、実際にジェンダーが多様な組織の方が成果を上げることが統計的にも示されているからです。
取組内容
「Gender inclusion and diversity」を組織のコアバリューとして設定
米国、スウェーデンの会員が中心となり、2020頃から組織内でジェンダーに関する取り組みが活性化しました。2022年には「Gender inclusion and diversity」をPIARCのコアバリューとして設定し、コアバリューを浸透させるための行動規範を盛り込んだCode of Conductの施行も見据えています。具体的な取り組みとして、コアバリューを浸透させるための戦略を立案し、それに基づいて実施した取り組みを年次でレポートとして報告する体制を構築しています。
ジェンダーの視点を取り入れるための組織体制の構築
PIARCの委員会の1つである「Performance of Transport Administrations」委員会が中心となって、その他すべての委員会の活動にジェンダーの視点を反映するよう活動しています。例えば、道路安全に取り組む委員会の活動には、男女の運転行動や事故率の違いを考慮するよう促し、トンネル内の火事や事故を調査する委員会では、事故時の性別ごとの行動特性の違いを分析するよう促しています。また、本委員会は、「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)」への配慮を含め、職場環境改善に向けた提言を策定するための調査・分析も行っており、2023年にはレポートを公開しています。
また、PIARC内の各委員会にはそれぞれジェンダーに関する担当者が設けられており、委員会内でのコアバリューの普及に取り組んでいます。その他、米国、スウェーデン、オーストラリア、英国の支援で、全会員が受講必須のジェンダー研修(約3時間)を開発・提供しています。
国際会議の開催
PIARCは4年に1度国際会議を開いており、2023年に開催したプラハでの世界道路会議では、「Gender inclusion and diversity」をテーマとしたセッションやネットワーキングイベントも開催しました。次回は2026年3月にフランス、シャンベリで開催予定で、同様のイベントを計画しています。
成果と評価
2年ごとに実施している組織内の会員向けのアンケートの最新結果(2024年)では、「女性が十分に尊重されている」「ジェンダーに関する議論が組織内で行われている」「委員会等における技術的な業務においてジェンダーに関する観点を考慮する機会がある」の質問に「はい」と答えた人の割合に大幅な増加傾向(それぞれ10%、30%、21%の増加)がみられました。同アンケートにおいて、「組織内でジェンダーバイアスを感じた経験・目撃した経験の有無」については、85%が「いいえ」と回答しております。一方で、全体の2.2%はジェンダーバイアスを経験・目撃し、かつPIARCでの活動の継続に消極的になっているとの結果が得られています。PIARCでは、この数値については多すぎると認識しており、改善していくべきものと考えています。
各委員会、リーダー陣営における男性比率が依然として高いことは課題としてとらえています。委員会への専門家派遣は各国任せなので、PIARCから直接委員会の女性比率をコントロールできません。現在、全委員会に占める女性比率は約25%ですが、十分とは言えません。男性中心の分野で、なぜ女性や多様性が重要なのかを繰り返し説明し続ける必要があります。
今後の展望
ジェンダー・ダイバーシティの取り組みに終わりはないとPIARCは考えています。PIARCは主にボランティアで運営されており、多忙であるので、組織内へのメッセージの浸透には継続的な努力が必要です。私からのメッセージは「模範となるリーダーシップ」と「ポジティブな事例の発信」の重要性です。繰り返し前向きな事例を紹介し続けることが、変革の鍵になると考えています。