自己紹介、経歴と交通・ジェンダーへの関心
私はリスボン市役所で、歩行者アクセシビリティに特化したチームに所属しています。市役所には9年余り在籍しており、その間ずっと「歩行者アクセシビリティ計画」に携わってきました。学術的なバックグラウンドは人間工学で、インクルーシブデザインのためのヒューマンファクターや都市研究—都市環境から排除されがちな人々をどう観察・調査し、より包摂的になるよう環境やインフラをどう適応させるか—を学びました。これは、インクルージョン、観察、政策実装のための訓練された視点と手法を与えてくれるため、ジェンダー課題に取り組むうえでも役立っています。
以前は英国ロンドンに住み、リサーチと並行して地域の住宅協会で働き、障害のある人々の住宅や権利に関する調査にも関わっていました。
私のジェンダーへの関心は、必ずしも「ジェンダー研究」として始まったわけではありません。公共空間にいる人々や、そこからの障害者の排除に目を向ける中で、同じ都市・同じ場所においても、女性や女児が公共空間や公共交通を同じようには使っておらず、ときに恐れや排除感を抱いていること、そしてそれが長らく「当たり前」として見過ごされてきたことに気づきました。常に存在してきたものは、人々は当然のこととして受け入れてしまいます。何十年も続いてきたものを—組織の中でも社会全体でも—変えたいなら、人々の考え方を変えるのはいつだって難しい。こうした私のバックグラウンドは仕事に大きな影響を与え、非常に有用だったと感じています。
現在のプロジェクト
リスボン市役所の目標の一つは、市内に流入する自動車の台数を減らし、自家用車依存からモビリティモデルを転換することです。これは、カーボンフットプリント、持続可能なモビリティ、都市内の公共空間のマネジメントといった課題に対応するものです。人々が歩き、公共交通を使いたくなるような、安全で快適な歩行者インフラは不可欠です。ここにジェンダーの視点も必要になります。
プロジェクト内での役割
私たちのチームは現在12名です。このテーマに取り組み始めた当初は、チーム内の3名に、時期を分けて協働いただいた修士・博士課程の学生、さらにこの分野に関心を持つリスボンの専門家2名を加えた体制でした。私の役割は、プログラム戦略、調査設計、現場での対話、組織間の調整まで多岐にわたります。具体的には、リスボンの女性や女児の経験を把握するため、子どもの有無で分けた女性のグループ、大学生、障害のある女性、LGBTの女性など、様々なグループへのインタビューやフォーカスグループを実施しました。また、リスボンに居住・通学する学生を対象としたオンライン調査も行いました。
その後、公共空間における女性の安全と公共交通へのアクセスを促進する、バイロ・パードレ・クルス地区でのパイロットに向け、データ収集・診断フェーズとして、今度は特定の地区についてより詳細な情報を集めました。私たちは独自の方法論フレームワークを作成し、アクセシビリティ、利便性、セクシュアルハラスメント、社会的ダイナミクス、身の安全といった主要論点を選定しました。地域の学校で約110人のティーンエイジャーに対するアンケートを行い、多様な移動パターンを持つ地域の女子・女性(合計50人)との追加のフォーカスグループを実施し、バス停でも女性にインタビューしました。地区の大きな地図を用いて、道路安全、セクシュアルハラスメント、身の安全などに不安を感じる場所(エリア/通り/バス停)を特定してもらい、その場所に対する感情や認識(ポジティブ・ネガティブ双方)の理由を詳しく語ってもらいました。
センシティブなテーマであるため、まずは地区行政、町内会、若者グループ、住民協会など地域の組織に対して、このテーマを調査したい旨を説明し、すべての関係団体と顔を合わせて協議し、協力の重要性を強調しました。また、女性や女児から情報を収集するフォーカスグループは女性がファシリテートする方針をとり、安心感を優先しました。
次の段階では、データ収集の結果と診断を地域団体に提示・協議し、街路のデザイン変更やバス停の移設によって、どの課題を優先し、どの地点を対処すべきかを議論しました。これには路線変更やバスターミナルの移設が伴うため、リスボンの市営バス会社CARRIS(独自の経営と予算で運営)と複数回の会議・交渉を重ねました。公共交通にアクセスする際の女性の安全を促進することの重要性を説明し、バス停移設を検討する正当な理由であることを強調することが大切でした。
プロジェクトの成果と評価
工事は現在進行中で、3カ月以内の完了を見込んでいます。内容は、交通静穏化対策を伴う一部街路の再設計、歩行者アクセシビリティの改善、そして6カ所のバス停の変更(新設2、移設2、改良2)です。これにより、すべての人に利益がもたらされることを期待しています。私たちがプロジェクトを開始した当初、日常の人通りがあり、市場、郵便局、文化センターといった活動が集積する地域のメインストリートには、バス停が一つもありませんでした。私たちは利便性と安心感の双方の観点から、こうした点も踏まえてバス停の配置を見直しました。
明確な教訓も得られました。プロセスが長期化したため、地域住民とのコミュニケーションをもっと良くすべきでした。舞台裏では設計、資金確保、許認可、街路照明や地下インフラの調整など膨大な作業が進んでいても、住民は「時間を割いたのに何も起きていない」と感じてしまうかもしれません。特に、時間や感情を多く割いて協力してくれた方々の信頼を失わないためにも、進捗の伝え方を改善する必要があります。
工事着手直前には、介入の事前・事後を評価するための第2弾の路上調査を実施し、同じ設問への回答を工事前後で比較できるようにしました。女性や女児を対象に、午前6時から深夜0時まで調査を行いました。完了後、認識が私たちの期待ほど変わらないリスクもありますが、結果は結果として受け止め、施策そのものに加え、戦略やコミュニケーションも含む事後評価を行う予定です。このテーマに取り組むのは容易ではなく、ときに反発もあります。多様な立場・意見の女性の声を聞くこと—これは今回の経験から得た重要な教訓です。
今後の展望
次の課題—そして戦略—は、これを一地区に限られたパイロットで終わらせないことです。単に他の地区に拡大する以上に、都市計画の提案や公共空間の変更、モビリティ戦略を策定する際に、市役所がこれらの課題や提言を業務の一部として組み込めるようになるのが理想です。私たちのチームが旗を振って「これを考えて」「忘れないで」と言い続けるのではなく、日常の優先事項にしたいのです。
さらに、モビリティを気候合意や平等戦略の一部にとどめず、都市におけるケアと近接性の政策の中核要素として捉えています。モビリティがジェンダー中立ではない一因は、現実として女性が多くのケア労働—買い物、子育て、介護、地域活動—を担っていることにあります。性別に関わらず、誰もがこれらを安全・快適に行える都市にしたい。また、次世代の子どもたちに「女の子は夜一人で帰れない」という考えが刷り込まれない環境をつくりたいのです。
日本へのメッセージ
大規模な計画から始めるのではなく、小〜中規模から始めることをお勧めします。まず人に会い、話を聞き、現場の確かなデータを集め、このテーマに本気で取り組んでおり、何を語っているかを理解していることを示し、広げながら学んでください。「セクシュアルハラスメント」や「ジェンダー」という言葉自体に強いスティグマがある文化や集団では、言葉を相手に合わせて調整するのも有効です。
私たちの経験では、ティーンエイジャーはこうした話題を率直に語る準備ができていることが多く、一方で年長の女性には、まず公共空間における「不快感」や「恐れ」から話を始める方がよい場合があります。言葉は対話の中で育っていくのです。
このプロジェクトを通じて、私たちは多くを学びました。すべてが完璧だと装うのではなく、うまくいかなかった点も共有しながら前進していきたい。改善すべきことはまだたくさんあります。